日本の地層が原油を蓄えたのはなぜ?手がかりは「蓋・岩塩・泥」

今回は「原油」について深掘りしようと思う。どうして「原油」なのかというと、自然界の資源・燃料に関することがらを見聞きすることが増えたから。そもそも原油ってなんだろう?採れる場所によって成分は変わるの?
暮らしの中にあるガス、電気、石油って知らないことだらけ……(なのに使ってます!これじゃいかん!と思って、自分なりに調べたよ)

原油とは?
地殻が数億年かけて熟成させた「有機物の凝縮体

地殻から採掘されたばかりの、加工されていない状態を「原油」と呼ぶ。

原油は、地殻が数億年かけて熟成させた「有機物の凝縮体」だ。原油がある地殻は、砂や岩の粒が詰まったスポンジのような状態になっている。その岩の粒と粒の間のわずかな隙間に、地下水と原油が一緒に閉じ込められている。

ただし、閉じ込めるためにはあるものが必要だ。条件がある。地上へ届く前に「頑丈な蓋」があれば、原油はその下に溜まることになる。これが油田だ。世界には「岩塩」という強力な蓋で完璧に密閉された巨大な油田もあるよ。

原油の見た目はドロドロした黒い液体だ。この中には「ガソリン、灯油、軽油、重油、アスファルト」など、多くの人々の暮らしと密接に関わる成分が全部混ざり合っている。

  • 地殻:地球の一番外側の層のことを「地殻」という。場所にもよるが陸地から地下30〜50kmくらいまでを指す。原油はその中のもっとも表面に近い数kmまでの層に溜まっている。
  • マントル: 地殻の下の層を「マントル」という。ここには原油はない。熱すぎて原油が分解されてしまうからだ。

原油はそのまま利用できるのだろうか?

「できる」「できない」でいうと「できる」。ただし、現代では世界的にみても、原油をそのまま利用することは、極めて稀だ。

主な理由は3つ。

  1. 危険:原油には引火しやすいガス成分が含まれているため、そのまま燃やすと爆発的な燃焼が起きるリスクがある。
  2. 機械が壊れる:原油には砂や水分、不純物が混じっており、そのまま使うとエンジンの精密な部品が詰まったり、腐食したりする。
  3. 環境への配慮不足:原油には硫黄や窒素などがそのまま含まれている。燃やすと有害なガス(酸性雨の原因など)が出やすい。さらに、精製されていない重い成分が混ざっているため、不完全燃焼を起こして真っ黒な煙(すす)が出やすくなる。

原油をそのまま使うのは、日本では飛鳥時代まで遡らなければならない。当時は地面から湧いたものをそのまま松明(たいまつ)の灯りにしていたそうだ。

その後、現代でも発電所でそのまま燃やされることがあったが、排ガスが汚れるなどの環境問題があるため、今はしっかり精製して使うのが当たり前になっている。

時代呼び名・状況使い方特徴・課題
大昔
(飛鳥時代〜)
燃える水: 正体は、原油(臭水・くそうず)原油(臭水・くそうず)地面から湧き出たものを、松明(たいまつ)の灯りにした。日本最古の記録(日本書紀)。
煙が多くて臭いけれど、貴重な光だった。
江戸時代草生水(くそうず)外用薬として利用されていた。潤滑油として車輪のきしみ止めに利用した。原油を煮詰めて精製する「草生水(くそうず)壺」という手掘りの油井が作られていた。

(1970年代〜)
原油生焚き(なまだき)火力発電所の燃料として、巨大なボイラーで直接燃やした。石油危機などの緊急時に行われた。
排ガスが汚れやすく、環境対策が大変。
現在精製品ガソリン、灯油、軽油などに「精製」してから使う。【主流】機械が壊れず、環境にも優しい。

原油から精製品へ〜製油所のしごと

地殻から採掘したドロドロの原油。これを環境に配慮し、使いやすいガソリンや灯油に変える場所が、迷路のような配管に囲まれた巨大な蒸留塔がそびえ立つ「製油所」だ。ここで、たくさんの成分が混ざっている原油を熱してバラバラに分解していく。

この巨大な蒸留塔の中では、原油の成分ごとの「蒸発する温度(沸点)」の違いを利用した仕分けが行われている。塔の下から熱を加えると、軽い成分から順に蒸気となって上へと昇っていく。これを各階層で冷やして液体に戻すことで、ガソリンや灯油などを取り出す仕組みだ。

複雑に張り巡らされた迷路のような配管は、そうして分かれた成分を次なる精製の工程へと運ぶための血管のような役割を果たしている。

温度で決まる「精製品」の正体

蒸留塔の中で、どの高さ(温度)で取り出されるかによって、呼び名と使い道が変わる。

温度エリア(場所)製品名特徴・主な使い道
低温(塔の上部)石油ガス(LPG)すぐ蒸発する。カセットコンロ、タクシーの燃料。
ガソリンサラサラで燃えやすい。車の燃料。
中温(塔の中部)灯油ほどよい重さ。ストーブなどの暖房、ジェット燃料。
軽油パワーがある。トラック、バス、建設機械の燃料。
高温(塔の下部)重油ドロドロして燃えにくい。巨大な船、発電所の燃料。
アスファルト最後まで残る粘り気。道路の舗装(地面の土台)。

熱して成分を取り出していくわけだけど、実は「残り物」が出ないんです!最後の最後まで、きっかり使い切る仕組み。まさに無駄なし!

が、しかーし!ここで疑問が。
「熱するための燃料」はどうしてるのさ!?
350度以上の高温で熱し続けるには、とんでもないエネルギーが必要なはず。

実は、その燃料も「原油」なんです。 自分の材料をうまく使って、極限まで自給自足をしているんですよ。
例えば、アツアツの製品が持つ熱を、次に温める原油に分け与える「熱のバトンタッチ」を繰り返すことで、驚くほどの省エネを実現しています(熱の再利用)。

そして、なんと!製油所は、24時間365日一瞬も休まず営業中なんです!
なぜ、そこまで働き続けるのかって?

それは、一度火を止めて温度が下がってしまうと、中の油が冷えて固まって、迷路のような配管がガチガチに詰まってしまうから! 再び温め直すのにも、また膨大な燃料が必要になりますしね。

もちろん、巨大なポンプや制御システムを動かすための「電力」などは外部からも取り入れて、この巨大なシステムを支えています。

なぜ日本の地層は原油を蓄えることができたのか?

日本に眠る「石油のゆりかご」

そもそも、なぜ日本の地層に原油が蓄えられたのか。その理由は、日本列島がまだユーラシア大陸の一部だった、約1500万年前まで遡る。

当時、激しい地殻変動によって大陸が裂け、日本海が形成された。その際、沈み込んだ海底には、プランクトンの死骸を含む「有機物に富んだ泥」が大量に堆積したのである。

この分厚い泥の層が、のちに原油を生み出す「母岩(ぼがん)」となった。

「泥」が原油を閉じ込める

通常、原油は浮力で上へ逃げてしまうが、日本列島の形成過程でこの泥の層はさらに厚く積み重なり、巨大な圧力と熱を加えた。
やがて泥の中で生まれた原油は、周囲にある「砂の層」の隙間に移動し、そこで、もろいながらも蓋となった「泥岩」の層に阻まれて蓄えられたのだ。

つまり、日本の原油にとって、泥は「生みの親」であり、同時に「閉じ込める器」でもあったといえる。

日本の原油は、地表に漏れ出すってほんと?

なぜ、地中の原油は移動するのか。
その理由は、原油が水よりも軽いからだ。水に浮いた油が逃げ場を探すように、強い「浮力」で隙間をぬって「上へ上へ」と移動していく。

もし、地上へ届く前に「頑丈な蓋」があれば、原油はその下に溜まることになる。これが油田だ。世界には「岩塩」という強力な蓋で完璧に密閉された巨大な油田もある。

しかし、日本は事情が違う。激しすぎる地殻変動と、蓋となる岩石のもろさがあるため、原油が地表まで漏れ出してしまうのだ。

ここで登場するのが「泥」である。日本で原油が見つかる場所の多くは、大昔は海の底だった。そこには、プランクトンの死骸などと一緒に、細かい「泥」が分厚く積み重なっていた。

この泥が長い年月をかけて押しつぶされ、岩石(泥岩)になる。この岩こそが、原油を蓄え、あるいは地上へと運ぶ「ゆりかご」のような役割を果たしているのだ。

「泥火山」という不思議な現象

日本の一部地域では、地下の原油やガスが、水分たっぷりの泥と一緒に地表へモコモコと噴き出す「泥火山(どかざん)」を見ることができる。

本来なら地下深くに閉じ込められているはずのエネルギーが、地殻変動でバラバラになった泥の隙間を通り、まるでお粥が沸騰するように地表へ溢れ出すのだ。

日本の原油が「漏れ出しやすい」と言われる理由。それは、この柔らかくて脆い泥の層が、激しい大地の動きによって、あちこちに原油の「通り道」を作ってしまっているからなのである。

こうした現象は、日本の石油産出地として知られる地域で今も見ることができる。

  • 新潟県(十日町市など)
    地下の原油や天然ガスが泥と一緒に噴き出しており、周囲には独特の油の匂いが漂う。まさに今回のテーマである「原油の道」を間近に観察できる貴重な場所だ。
  • 北海道(新冠町など)
    「新冠(にいかっぷ)泥火山」として知られる巨大な泥火山群がある。地震などの地殻変動に合わせて活動が活発になることもあり、大地のダイナミックな動きを象徴するスポットである。

日本以外でも、原油が漏れている場所はあるの?

結論から言えば、答えは「イエス」だ。

世界的に有名なのが、アメリカ・ロサンゼルスにある「ラ・ブレア・タールピット」である。ここも日本と同じように、地殻変動によって地下の「蓋」が壊れ、原油が地表へ漏れ出している場所だ。このタールの池は、実は数万年前の動物たちが足を取られた『天然のタイムカプセル』としても知られ、今も多くの化石が発見されている。

漏れ出した原油は、軽い成分が蒸発して、粘り気の強いアスファルト(原油の成れの果て)の池となっている。
つまり、「地殻変動が激しい場所」では、世界中のどこであっても、原油が地表へと漏れ出す可能性があるということなのだ。

大地の鼓動を感じる「原油と泥」の物語

日本の地層が原油を蓄え、そして時にそれを地表へと逃がしてしまう理由。その鍵を握っていたのは、意外にも私たちの身近にある「泥」であった。

太古の昔、海の底で静かに積み重なった泥は、原油を育む「ゆりかご」となり、同時にそれを閉じ込める「器」となった。しかし、日本列島という激しく動く大地の上では、その器は時に脆く、原油は「浮力」に導かれるまま、泥火山の沸き立つ「道」を通って地上へと旅を続けている。

「原油が漏れ出す」という現象は、一見すると資源の損失に思えるかもしれない。しかしそれは、数千万年前の地球の記憶が、今もなお私たちの足元で脈動している証(あかし)でもあるのだ。っと考えて地面を眺め、地面を感じてみると、なんともいえない不思議なそしてドキドキした気持ちになるー(深掘りしてよかった!)